綿屋(宮城/金の井酒造)

綿屋(宮城/金の井酒造)

「綿屋」を醸すのは宮城県・一迫(いちはさま)の金の井酒造です。地元では「金の井」「寿礼春」という銘柄も少しだけ造っています。
綿屋のお酒は米と水の良さを生かした造りが特徴です。水は「小僧山水」と呼ばれる、某大手の飲料メーカーが工場を作りたがる様な、清涼な水を使い、米は地元の熱心な「専業農家」さんの造る品質の良いもの、そして、それらを丁寧に蔵元が醸すという、三位一体で成り立っています。
日本酒は言うまでも無く、米と水(と人)で出来ていますので、綿屋を造る環境というのは、本当に恵まれています。

特に注目すべきは、農家さんのレベルの高さ。

実は、米の栽培農家さんは兼業が多く、高いレベルで米を作る専業の農家さんは少なくなってきています。しかし、金の井酒造は恵まれた事に、近隣に「名人」と呼ばれるような専業農家さんが何人もいるのです。その人々の力を得て、北限山田錦と呼ばれる日本最北端の山田錦の栽培にチャレンジした意欲的なお酒や、無農薬栽培のアミノ酸タップリのお酒を世に送り出しているのです。
他の酒造メーカーでも「米違い」などでラインナップの幅を持っていますが、「農家違い」というラインナップはあまり見かけません。綿屋はコレをやっています。近隣に実力と意欲のある農家さんが多いから為せる業です。
蔵元にしたら、農家別というのはかなり面倒な作業である事は容易に想像できます。しかし、そこに敢えて踏み込むところがこの蔵の魅力でもあります。モチロン、美山錦や阿波山田錦など、県外の米も使用しております。これらもとても高品質なものです。綿屋のお酒は米と水の良さを生かした造りですので、原料が良くなくてはいけないのです。

食事に寄り添うお酒

綿屋の酒は簡潔に言うと「食中酒」なのですが、蔵元は「食事に寄り添うお酒」と表現します。
食中酒というと、色々なイメージを持たれる方が多いと思いますが、綿屋は「そっと料理に寄り添い、料理が酒に寄り添う」・・・そんな、さり気無く気の利いた味わいのお酒なのです。
香りは穏やかで、流行の過度な甘味はありません。だから、食事と調和し料理もお酒も進みます。
何も意識せずに食事と綿屋を試してみて下さい。いつもよりお酒を沢山飲んでいた事に気付くはずです。それが綿屋の「さり気無さ」なのです。
このさり気なさのヒミツの一端は「酸」にあります。酸というとスッパイイメージを持たれるかも知れませんが違います。現代の日本酒では酸はとても重要な要素で、料理の脂を流したり、料理の旨みと調和し、次の一杯が重くならない、そんな重要な役割を担っています。
昔は酸が出ているとダメな酒だったらしいですが、酸のしっかりしたお酒は、現代の食事の嗜好にとても合っています。なぜなら昔よりも、食事が濃く、脂っこくなってきているからです。
金の井酒造のお酒は昔から酸が特徴的に出ていたそうですので、その頃から考えると革新的な酒であったということなのかもしれません。

宮城の誇り

宮城のお酒は全国的に見ると価格が高いように思います。これには、宮城の各蔵元の、酒への、特に純米酒への自信が感じられるのですが、綿屋はその中にあって、更にチョット高いお酒です。
綿屋のお酒が他よりチョット高いのは何故なのかというと「米が良いから」なのです。日本酒の価格は米の価格で決まると言っても過言ではありません。良い米は高く、良い米でなければ良い酒は造れません。だから、「良い米を安く買い叩かない」のです。
「高く買えば、次はもっと良い米を作ってくれる。」と蔵元はおっしゃいます。目先の利益だけ考えれば、もしかすると幾らでも値切れるかも知れませんが、酒造業を主体とした地元産業としての理想を描いているのかもしれません。蔵が米を買い、農家が育ち、地元が潤い、という様な経済サイクルです。
特にこの辺りは、2008年の宮城県内陸地震の震災エリアでもありますので、蔵として出来る事を考えたり、地元を盛り上げたいという気持ちがあるに違いありませんが口には出しません。

究極の食中酒とは何か?これが綿屋の答えです。

綿屋 商品一覧

※記事は2010年頃のもの

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