土田・誉國光(群馬/土田酒造)

群馬県・川場村の観光蔵?

土田酒造は、明治40年(1907年)創業、過去には関東で唯一の名誉賞受賞(明治から行われていた全国清酒品評会で連続入賞した蔵だけに与えられる特別な賞)蔵でもあります。
元々は沼田という場所に蔵があった様ですが、平成になってから川場村に移転しています。
川場村は一級河川が4本も流れる自然豊かな土地で、一月の平均気温は-2.8度、豪雪地でもあり、酒造りには最適な土地の様です。
創業以来のブランドは「誉國光」で、近年新たに「土田」を投入している。

そんな土田酒造は、意外にも観光蔵といういう様相で、酒造りの見学だけでなく、食事や、買い物などを楽しめる施設もあり、駐車場にはバスが何台も停まっていました。
もちろん、見学コースと作業スペースはしっかりと切り離れているので安心ですが、いわゆる観光蔵から、あの素晴らしいお酒が醸されているという事は驚きでしかありません。

武尊山(ほたかやま)の伏流水を仕込水にし、これも敷地内で自由に飲むことも可能ですので、是非、蔵に遊びに行ってみるのも良いかもしれませんよ!

無添加への偉大なチャレンジ

元々は普通酒メインの酒造りを行っていた様ですが、蔵元・土田祐士氏と杜氏・星野元希氏が中心となり、徐々にクオリティーアイテムに移行。
2013年には山廃チャレンジを開始し、29BYに「突如」と言っても過言ではないタイミングで、群馬県初の全量「無添加」山廃純米蔵に切り替わりました。

ちなみに、無添加というと酵母無添加を想像するかもしれませんが、酵母は使用しています。(但し、酵母無添加のアイテムもあり)
乳酸、酵素剤、酸味料、酒質矯正剤などの表示義務の無い添加物を一切使用せず、また、純米蔵なので、アルコールも添加していません。という事です。

現代的な酒造りで使われる 乳酸、発酵促進剤、水加工薬品、糖類、アルコール、おり下げ剤、炭、除酸剤 など…これらは、酒を安定的に製造する為の技術や材料のため、添加しないという事は、いわゆる失敗が増えてしまうというデメリットがありますが、「失敗も楽しむ」というポジティブシンキングで楽しく乗り越えている様に思いました。
是非、飲み手の皆様もこの「楽しみ」に参加してみるべきだと思いますよ!
実際、Initial Fは失敗から生まれたアイテムで、酸味が特徴の意外な味わいが「美味しい!」と、好評だったりします。

土田氏はもともとゲーム会社で働いていたという経歴をもっており、見学の際も、ipadを片手に、ロジカルで分かり易い説明が印象的でした。
数々のチャレンジや難題は、「推測し、やってみる、そして結果を検証する」という、トライ&エラーの手法でクリアしていきます。

そもそも、何故、無添加なのか?という問いには、「簡単にいうと気持ち悪かったから。」と、土田氏は言います。
もちろん、法令で認められたものであるとしても、酒造りに不要なものであるし、飲み手に対してもどこか後ろめたい気がしていたそうです。
子供たちに自信をもって「こんな酒を造っている!」と言えるだろうか?など、自問自答の結果、この様な真っ当に振り切れたカタチになったそうです。

山廃のメリット

さて、これまで、土田酒造を「山廃」蔵と紹介をしていますが、実はどちらかと言うと「生もと」蔵なのかもしれません。
酒母室にはもと摺りドリルもスタンバっておりましたし、麹もパラパラで水分量少ないのが特徴でした。
生もと/山廃の違いが、明確ではない為、とりあえず山廃を名乗っているという事です。
余談ですが、山廃の麹造りに於いて、種麹は第1世代といわれるものを使っているそうで、これが非常に重要だとの事です。

山廃のメリットとしては、菌に頼った造りの方が、深い味わいのお酒を造れる。という事が挙げられます。
乳酸を入れて造る速醸は、発酵中にペプチド(お酒のうまみになる成分)を酵母が食べてしまい、生もとや山廃などの自然の乳酸菌を活用した酵母では、その旨味成分を食べる事なく、醪中に残す。という論文もある様です。

そして、何より、「造っていて楽しい」と土田氏は言います。

今後も要注目。

土田酒造は山廃、純米、無添加を軸に、様々なアイテムを投入しています。
白麹、低アル、麹9割9分、菩提もとハイブリッド などなど。今後は原料米へのアプローチも??
これからも目が離せない酒蔵です!

※記事は2019年6月頃のもの

土田・誉國光 商品一覧

 

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