その殆どが地元で消費される、地酒
日立市というとあの日立を思い浮かべますが、十王町高原はもう、山の中です。
日立北インターチェンジから車で15分ほど、峠を登ったり下りたりした前に、椎名酒造店はあります。
創業は明治10年。歴史を感じさせる門構え、佇まい。
石高は250石程で、その殆どを地元で消費する。富久心は文字通り、地元に愛される地酒です。
突然の世代交代
椎名酒造店は、母と息子の2人しかおらず、息子の椎名健二郎氏が杜氏として酒造りにあたっている。
先代は非常に研究熱心な方だった様で、それが祟ってか、体調を崩す事になります。
急遽、健二郎氏が蔵に戻るも、2012年に父が急逝。そして、健二郎氏がそのまま造りを引き継ぐ事となる。
結局、健二郎氏が父の造りを見られたのはほぼ1造りしか無かったが、先代と共に造った最後のお酒は、全国新酒鑑評会で金賞を受賞する。
世代が変わっても変えないという事
世代が変わると、酒質を現代風に変えてみたり、というのは良くあるパターンだが、健二郎氏は、「自分の酒を造るよりも、今までのままを再現・継承できる様に頑張りたい」「少なくとも10年間は自分のやりたい酒などは考えない」と言っていた。
実際、全くラインナップを弄る事無く、椎名酒造店の味を再現・継承をしており、純米以下のお酒をお試し頂いた方は、富久心はいわゆる昔ながらのスタイルと思われるかもしれません。
しかし、心地よい吟醸香と共に広がる透明感のあるクリーンな米の旨味に、杯を重ねても軽やかな素晴らしい仕上がりの純米吟醸 美山錦や、毎年11月末から販売される冬季限定のもろはくのトロリとした口当たりにリンゴ様フレーバーのガスを含んだ爽やかな味わいの、飛び道具感も今の時代にもピッタリだと思います。
是非、お試し頂きたいアイテムです。
蔵の特徴はハードな仕事量
蔵の設備は至ってトラディショナル。現代的な設備を見慣れてしまった者から見ると、この設備でどの様にして、あの美しい大吟醸や純米吟醸の様な酒が生まれるのだろう?と考えてしまう。
見学させて頂いた際も、疲労困憊の健二郎氏がそこにはいました。健二郎氏のハードな仕事量がこの富久心の味わいを生み出している様です。
また、特筆すべきは、蔵内に湧き出る仕込水の優しい事、優しいこと。財産とも言うべき、水の良さ。鮮烈なる水の美しさをもって、富久心は出来上がっている。
そして。
30BY全国新酒鑑評会では、見事に金賞を受賞した。
※記事は2019年6月頃のもの
⇒ 富久心 商品一覧
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