旭鳳・泰平(広島/旭鳳酒造)

風情ある街並みに溶け込む様な蔵・酒。

広島駅より電車で40分ほどの可部駅から更に徒歩15分の場所に旭鳳酒造はある。
旧出雲街道沿いで、宿場町として栄えた事が見てとれる古い建物が未だに数多く残った風情のある街並みが印象的。
昔は養蚕、鋳物の等の産業が中心であったとか。
地形的には盆地にあり、冬は寒く、夏は暑いという振り切れた四季を感じられる場所です。

慶応元年(1865)創業の旭鳳酒造も当時の面影をしっかりと残している。
旧街道に面した800坪もの大きな敷地には、中庭をぐるりと囲む様に、母家、売店、酒造りを行う蔵が繋がったカタチをしている。
中庭の小さな池では鯉を飼っていたり、蔵の売店の軒先にはツバメがいくつも巣を作っていたり、と、生き物に非常に優しい。
そして、その生き物のかわいさを熱く語るチャーミングなお母さんも魅力的。

ラインナップは「旭鳳」と「泰平」

酒銘「旭鳳」の由来は三代目・濱村忠氏が高松山の朝日に向かって鳳凰が飛んでゆくという壮大な夢を見たことから名付けられた。
先代の6代目は2015年に逝去し、7代目の洋平氏が26歳という若さで蔵元杜氏として跡を継ぎ、現在に至っています。
洋平氏は新たに「泰平」ブランドを立ち上げ、様々なチャレンジも行っている。

最盛期は1000石程の生産量であったが、現在は400石弱。
醪30本中4本は泰平ブランド。着実にファンを増やしている証拠に、毎年2本ずつ位増えている。
近年はドイツなどへの輸出も始まり、可部の魅力を世界に発信し始めています。

味わいの特徴、これからの旭鳳

基本的に全て小仕込みの1000kg 仕込みで、純米吟醸の一部以上を瓶燗火入れ。
搾りは薮田。常温タンク貯蔵と-5℃冷蔵庫の貯蔵を使い分ける。
造りとしてはオーソドックスなスタイルで、仕込タンク等々、全てがやや大き目ながら、各工程を如何に丁寧にするかという事に注力している。
蔵の内部は非常に広いにも関わらず、手入れが行き届いており、醸造機器や蔵内の清潔を保っているのは素晴らしいと感じました。
そして、今後はトラディショナルを追及するのか、設備等を入れて、造れるお酒の幅を広げるのか、どちらにでも行ける様な可能性を秘めており、将来が楽しみ!
洋平氏と共に酒造りの中心を担う本田部長のキャラクターも非常に面白く、今後、攻め込んだ酒を造ってくれそうな予感!!

酒の特徴としては、やや硬度のある仕込水により、ふくよかな酒を生み出している。
キレイなタイプのお酒を造っても厚みが出るのが特徴で、クリーミーな質感となる。
自社酵母のKB-1,KB-2の程よい果実味も特徴的で、独自の味わいを醸し出すのに一役かっている。

渋、酸なども突出する事無く、全体のバランスを重視している様に思える。
旭鳳は、酒が主張するのではなく、食事全体を押し上げる様な存在であると言えます。
広島と言えばお好み焼きをイメージするが、ソースの様な濃さ、甘味のある味わいには非常に相性が良いのは言うまでも無く、洋食などにも違和感なく溶け込める酒質です。
クリーミーな質感のお酒はクリーム系のお料理や、オイルを使ったお料理にもピッタリ!
牡蠣などの奥行のある味わいを包み込み、味わいを引き出してくれますし、ジューシーな肉料理にも合わせたい。
旭鳳の香りは穏やか目だが、洋食の際は大ぶりのワイングラスで香りを引き出して楽しむのもアリだと思います。

現在は県産米を主軸に酒造りを行っているが、ゆくゆくは地元米によるミクロなテロワールを表現したいと考えているそうです。
また、それぞれの米のポテンシャルを十分に発揮できる様な表現力を高めていきたいとの事。
2014年の豪雨・洪水の件で、休耕田が出るところ、地元の有志による米作りを試験的にスタートし、今後は米の生産から酒造りまでを連続的に関わる事で、更に地元の魅力を発信できる様になれれば、と。

のんびりとした休日に可部は良いかも。

広島駅から可部へのアクセスは非常に良く、春は自社の蔵開き、秋は町歩きイベント等も開催しているので、是非、可部に遊びに来てほしいとの事。
確かに、のんびりとした休日に、良い雰囲気の町でしたよ!

※記事は2019年6月頃のもの

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